俺と建舞 ガキの頃の小遣い稼ぎのひとつに建舞(たてまい)があった。 建舞は家を建てる時の建築儀式のひとつで、職人さん達の労をねぎらうのが目的である。 棟上(むねあげ)、上棟式(じょうとうしき)、建前(たてまえ)って別名もある。 この建舞の時に、餅や金をばら撒くのである。 現金は5円、10円、50円、100円が主。 1回の建舞で数百円の小遣いになる。小学生にとっては大きい。 家の基礎を作っている所があると、そのうち建舞やるなってワクワクしたものだ。 暇な時には友人とちゃりで30分掛けて、隣町の建舞まで行ったこともあった。 何日にやるかってのは事前にわからないのだが、前日ぐらいになると何となく気配が 漂ってくる。 建舞が行われる時刻は夕方。両隅に弓矢が飾られたら建舞の前兆だ。 しばらくすると五色の幟が立てられる。本前兆。 この旗を見て近所の人や通りすがりの人がわらわらと集まってくる。 この時の高揚感は何とも言えず、みんなハイテンションになっていた。 神主が何やら唱え始める。 この呪文タイムは10分ぐらいなのだが、長く感じたものだ。早く早く~。 いよいよ始まる。 最初は小さな餅(ピンクと白の2種類)が投げられる。 とりあえず拾うけど、子供にとってはそんなに嬉しくはないよね。 中盤になるとスナック菓子なども投げられる。 これは子供の主食なので積極的に取る。数多く取ると嵩張って行動が制限されてしまうのが問題だが。 最後には大きな餅が2つ3つ投げられる。これは定番。 そのうち1個は関係者に向けて投げられる事が多い。 これって凶器だよね。結構危ない。 大きな餅を取ると満足感はあるのだが、処理に困るシロモノである。 家に持ち帰った所で誰が食うのだ? 柿、みかんなどが投げられてあちこち果物の汁まみれの現場や、千円札や一万円札が投げられる 射幸心煽りすぎの建舞も経験してきた俺が攻略法を教えよう。 まずは投げる人の手元を見る。これは全員がそうするだろう。 投げる人の手元から品物が離れたら、初速度、角度から放物線を導き出し落下地点を予想する。 落下予想地点をガン見。 で、品物が落ちた瞬間に取る。 この戦法でかなり良い成績を叩き出す事ができるのだ。 多くの人が落下物をダイレクトで取ろうとする。落ちるより先にキャッチすれば勝ちだからね。 だが、ダイレクトキャッチの成功率は極めて低い。マニア汁調べでは7%前後である。 それならばダイレクトキャッチから漏れた品物を直接頂く方が分が良いだろう。 ダイレクトキャッチに挑戦して、失敗してから下を向いたのではもう遅いのだよ。 そんな建舞も、中学を卒業してからは興味が無くなってしまった。 こっちに引っ越してきてからは、建舞自体を一度も見ていない。 最近はやらないのかな? 地域的なものなのかな? 戻る